ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

2023年度 慈恵医大数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、東京慈恵会医科大学の数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1. 確率 (25分)

2. 微分方程式と面積の極限計算 (25分)

3. 無理数であることの証明 (20分)

4.  空間内の2直線の交点(30分) 

計100分

 

<体感難易度>

1≦2≦3≦4

難易度は昨年度と大差なし、大問間にも極端な易問や難問はなかった印象です。

医学部受験生であれば、十分高得点が狙えるセットなのではと思います。

 

<個別解説>

第1問

確率の問題ですが、実質整数問題の色合いが濃いです。

 

ア、イともに、対応する(r1, r2, r3, r4)の組み合わせを探すことに終始します。

 

ア:

r1~r4が対称なので、一旦r1≦r2≦r3≦r4と仮定して(r1, r2, r3, r4)の組を調べていくとよいです。但し、最後にr1≦r2≦r3≦r4の制限を失くして場合の数を数え直す必要があることに注意です。

 

イ:

できるだけ、r1r2やr3r4の値の範囲が絞れるように工夫していきます。

左辺の各分数は1未満なので、r1r2>4, r3r4>2が言えます。前者の方が範囲が狭いので、r1r2に注目して考えていくとよいでしょう。

 

このときにr3r4をr1r2の式で書くことにより、r1r2 -4が8の約数だと分かるので、この時点でr1r2の値を4通りに絞ることができます。

 

あとは、この4通りについてr3r4の値を調べていきましょう。

 

<筆者の解答>

 

第2問

微分方程式と面積の極限計算の問題です。

 

(1)問題文のf(x)に関する微分方程式を解くための誘導設問です。

h'(x)を計算すると、綺麗にf(x)が消えてくれます。その結果を積分すればh(x)が求まりますが、積分定数の決定のためにf(0)の情報が必要です。

この結果からf(x)が求まります。

 

(2)2曲線がx=pで交わるとして、pに関する2つの連立方程式を作って解くとよいでしょう。

 

(3)Snは積分計算で直接求まるので、極限も直接計算可能です。Snの和を直接計算することも可能ですが、区分求積法を使うと計算量を少し節約できます。

 

<筆者の解答>

 

第3問

無理性の証明問題です。

 

問題文を言い換えると、「√(2r^2 +3s^2)が(r,s)≠(0,0)のとき無理数であることを示せ」となるので、当然使う方法は背理法です。

 

登場する文字が有理数のままだと考えにくいので、r=a/b, s=c/dと分数の形にすることで登場する文字を全て整数にすると見通しが良くなります。

 

こうすると結局、「整数M,Nについて、(M,N)≠(0,0)のとき2M^2 +3N^2が平方数にならない」を示せばよいと分かります。

(※ここでは『nが平方数でないとき√nは無理数である』を証明なしに使っています。実際にこの定理を証明する必要があるかどうかは分かりませんが、たぶん証明抜きに使ってよいと思います)

 

ここまでくれば、2M^2 +3N^2 =L^2 (L:自然数)の形で書けると仮定して矛盾を導く、という方針が立ちます。

 

「平方数」というワードが出てきたときに注目したいのは、「3で割った余り」です。ちょうど左辺に3があるので、このポイントに注目すると突破口が開けそうです。

 

具体的には、L^2を3で割った余りが0か1になることを利用し、それぞれについて矛盾を示していきます。

 

L^2を3で割った余りが1のときは、M^2を3で割った余りが2になって矛盾。

L^2を3で割った余りが0のときは、M,N,Lが3で無限回割り切れることになり矛盾。

 

という感じになります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

空間内の2直線の交点に関する問題です。

 

(1)方針としては、a,b,cをそれぞれr,θの式で表現する→r,θを消去してa,b,cの関係式を作る

でよいと思います。

RがAP上にある条件と、BQ上にある条件とを連立することで、a,b,cがr, θの式でそれぞれ書けます。

 

その後、θは簡単に消去できますが、rの消去の仕方は少し経験がないと閃きにくいかもしれません。

 

(2) (1)の結果から、OG・ORがr, θの式で書けます。この式にはsinθとcosθが混在してて、rcosθ=1/2から「θを消去」しようとするとsinθの消去が面倒になります。

 

ということで、「θではなくrを消去する」方針で考えましょう。式変形すると、OG・ORはtanθのみの式で書けます。

t=tanθと変換することで単純な微分に帰着でき、最大値とa,b,cを計算できます。

 

<筆者の解答>