このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
17回目の今回は、2003年の問題です。
第1問
特定の条件をみたす2次関数の積分値の最大最小問題です。
条件(A)の処理は容易で、bとcをaの式で表せます。
あとは、条件(B)の処理ですが、これはaの値によって場合分けすればよいでしょう。典型的な、2次方程式の解の存在条件の処理です。
これでaの満たすべき条件が分かるので、Iを計算して処理するだけです。
<筆者の解答>
第2問
パラメータ表示された複素数にまつわる問題です。これは忖度力(?)が求められる難問です。
(1)では角度が問われています。
普通角度を機械的に求めようとすると、ベクトルの内積などを計算してcosの形で求めることになりますが、今回の問題の場合、PA, PB, PAとPBの内積のすべてが煩雑な形になり、この方針だと破綻します。つまり「機械的に求めるようとすると、うまくいかない」わけです。
ということで、機械的でない方法を探る必要があります。
ここで、問題文をよく読みましょう。「∠APBを求めよ」です。cosとかではなく角度そのものが訊かれています。しかも、「tの式で表せ」ではないので、tによらず一定値になることが予想できます。
「Pが動き回るのに角度は一定」で思い出されるのは、「円周角の定理」です。
そうです、A,B,Pがいつも同じ円周上にいれば好都合じゃないですか?そして、簡単に分かる角度として∠AOBは45°で確定です。
ここまで総合すると、「Pは、点O, A, Bを通る円周上に、常にいると好都合」だとわかります。この願望にすがって、証明をしてみましょう。
無事、Pがこの円周上に必ずいることが計算により分かります。これにより円周角の定理が使えそうです。
次に気になるのは、Pが線分ABに対してどっち側にあるか、です。
左側にあれば∠APB = 45°、右側にあれば∠APB = 135° となります。
ここは、Pの実部と虚部がどの範囲を動くかを調べるしかないです。結果、左側にあると分かります。
(2)は、(1)での考察から、OPが直径になっていれば最大になることが分かります。
このように、(1)での訊かれ方から、色々出題者の意図を忖度してあげないとうまく解けないという意味で、難しい問題でした。
<筆者の解答>
第3問
円錐と円柱の共通部分の体積を求める問題です。誘導が非常に丁寧ですので、解き切りたいところです。
(1)は、言われた通りにz=tでの断面を描きましょう。このとき、θが図の中でどの角度を指しているのかを見極めるのが重要です。
(2)は(1)を置換積分するだけです。計算量は少し多いです。
<筆者の解答>
第4問
無理数の整数部分の1の位を求める問題です。
(1)は、まず解と係数の関係により、α+β=4, αβ=-1が分かるので、s1,s2,s3は簡単に計算できます。漸化式も、類題経験があれば瞬殺だと思います。
(2)は、(3)を解くための寄り道です。2次方程式を実際に解いてみると、
α=2+√5, β=2-√5となるので、特に-1<β<0となっています。絶対値が1未満のものを何乗しても、やはり絶対値がは1未満になります。
ということは、βを奇数乗しても、やはり、その数は-1と0の間になります。
(3)は、(1)(2)を使って考えていきます。
まず、(2)での考察から、α^2003 = s2003 + (1より小さい正の数)となるので、s2003こそが、α^2003の整数部分になります。(※snが整数なのは、漸化式から明らかでしょう)
よって、s2003の1の位が分かればよいことになります。
snの一の位は、n=1から順番に漸化式を使って調べると、4→8→6→2→4→8→・・・と4つおきの周期をもつことが分かります。
<筆者の解答>
第5問
サイコロの出た目で積を作り、それが5,4,20で割り切れる確率を求める問題です。非常に出題頻度の高い題材と言えます。
(1)(2)ともに、「割り切れない」を先に考えたほうがよいですね。
(1)の場合は、「5が1回も出ない」、(2)の場合は、「奇数しか出ない」か「1回だけ2か6が出るが、あとは全部奇数しか出ない」ですね。
(3)は、ベン図を描くと分かりやすいと思います。「20で割り切れない」よりも、「5でも4でも割り切れない」の方が考えやすいので。
pnの式は、3つの等比数列(に1次式をかけたもの)の和になっているので、公比が一番大きいもので括ってしまいましょう。
極限を出す際は、|r|<1の時に「n×r^n→0 (n→∞)」という事実を使いますが、これは証明なしに使ってよいと思います。
多項式よりも、指数関数の方が強い と覚えておきましょう。
<筆者の解答>
第6問
ついに来てしまいました。。。日本で一番有名な東大の入試問題といっても過言ではないでしょう。
時代背景としては、「円周率は3で計算する」という「ゆとり教育」に物申したい!!という東大からのメッセージなのでしょう。また、「円周率ってそもそも何?」という根本を問うている、まさしく衝撃的な問題なわけです。。。
この問題については、語りたいことが多すぎるため、別に記事を上げました。
ここでは、要点だけを。
解答の要点は、
・円に内接する正n角形を考える
・正n角形の全周は、円周より必ず小さい
・nが大きくなるほど、それは円に近づく
です。3.05より大きいことを示すなら、n=12を考えればよいです。
※他にも別解が多数あります。
<筆者の解答>
別解その1:本回答でn=8とやった場合です。この場合は√2を小数点以下3桁の精度で評価しないと解けません。
別解その2:本回答で余弦定理を避けて直角三角形を利用した解法です。これであれば中学生でも回答可能でしょう。
別解その3:積分の結果に円周率が出るような関数を用意して、面積を使って評価する方法です。
別解その4:純粋な中学数学だけで解く方法です。
別解その5:バーゼル問題の4乗バージョンを使った解法で、大学入試として解く方法としては非推奨です。最初に使う定理自体、フーリエ級数展開という大道具を使わないと証明できませんし、この証明自体にバーゼル問題の答えを使わないといけません。