ちょぴん先生の数学部屋

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平成の阪大文系数学 2003年

旧帝大の文系向けの過去問を取り上げます。理系との共通問題は理系の記事を参照して頂くこととし、基本は文系ユニークの問題のみ取り上げます。

この記事では大阪大学の2003年の問題を取り上げます。

 

理系の記事はこちら↓

平成の阪大理系数学 -2003年- - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

第1問

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抽象的なベクトルの証明問題です。(1)は計算するだけですが、(2)は文系にとっては取っつきにくい問題だと思います。

この問題における{ }は、理系で習う「行列式」を計算するものになっています。

 

(1) 定義通りにlc+ma+nbをひたすら計算しましょう。

 

(2)文系には厳しめの純粋数学チックな問題です。

ベクトルの単元で習う内容として、「任意の2次元ベクトルは、2本の1次独立な2次元ベクトルの線形結合でかける」というものがあります。線形結合とは、定数倍して足し算する作業のことです。平面での1次独立は、「平行でない」と言い換えることができます。

さて、今回の問題では、aとbが平行でなければ(つまり1次独立なら)、d=αa+βbと書くことができます。ここで気になるのは、果たしてaとbが1次独立なのかどうかですが、今回の場合はちゃんと1次独立なことが保証されています。なぜなら、もし1次独立でないとすると、aとbが平行なのでlを計算するとl=0となってしまうからです。なのでl>0と指定されている以上、aとbは1次独立なことが保証されています。よって、安心してd=αa+βbとおけるので、これを足掛かりにして考えていきましょう。

 

次に考えるべきは、どうやってcを出現させるか、そして果たしてr,s,tを0以上にできるかです。ここで(1)を使いましょう。ベクトルに0を足しても何の影響も受けないので、(1)の結果を適当に定数倍(C倍)して、dに足してあげましょう。こうしてcを出現させることができます。

 

このままだと、a,b,cの係数の符号は何とも言えませんが、Cを十分大きくしてあげれば、どんなにα,βがマイナスに大きく振れていたとしても係数はいつかプラスにできます。これで題意が示されました。

 

このような定数の取り扱い方は大学数学以上にならないとなかなか使わないので、文系の人にとっては本当に厳しい問題だったかと思います。

 

<筆者の回答>

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第2問

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素因数の積に関する問題です。

 

(1) m,nを実際に素因数分解した形に書いてあげて両辺を計算し比較しましょう。

 

(2) (1)の結果から、p1の場合はmとnが互いに素な場合、p2の場合はmとnの最大公約数が2の累乗になっている場合だと分かります。

 

p1を考える際は、mとnに1が含まれた瞬間に互いに素になるので、互いに素でない場合を数えたほうが楽です。その方がp2の検討にも即役立ちますし。

 

<筆者の回答>

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第3問

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放物線と直線で囲まれる面積に関する問題です。

 

この問題の肝は、如何にして計算地獄を回避するかです。問題文に書いてある図形の面積を直接計算しようとすると計算地獄に陥ってしまうので、図形的な工夫をしたいです。

その際に、CとABで囲まれる面積、CとPQで囲まれる面積をベースに考えてあげると、

問題文の面積は、それら2つからどれだけ削られているか、はみ出しているかで考えられると分かり、結局、「CとABで囲まれる面積」=「CとPQで囲まれる面積」となることが分かります。これに気付けたか否かが大きく明暗を分けます。

 

<筆者の回答>

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