ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

2021年度 東工大数学 解いてみました。

2021年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、東京工業大学の数学に挑戦します。

 

 

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

 1. どの位も9にならない整数に関する和(10分)

2. 楕円に内接する平行四辺形(45分)

3. カタラン数が素数になる条件(85分)

4. 球面上の4点に関する関数の最大化(45分)

5. 円が領域に含まれる条件、回転体の体積(115分)

 

<体感難易度>

 1<2<4<5<3

東工大らしい重厚なセットです。どの問題も、基本的には計算が長い上に方針をしくじると泥沼にはまってしまいます(第5問で2時間弱かかってしまったのも、方針を決めるのに時間がかかってしまったため)。

第1問が飛び抜けて簡単なのでこれを確実に押さえ、あとは部分点狙いで良いでしょう。最難問は第3問の(3)で、完全に捨て問です。

 

<個別解説>

第1問

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どの位も9にならない整数に関する和を評価する問題です。

(2)がかなり面倒に見えますが、実はうまくやるとあっという間に解けてしまいます。本セットで一番簡単な問題なので、これを落としてしまうとかなりきついです。

 

(1) 問題文で言われている整数は、k桁の整数でどの位にも9が出てこない数、です。

結局、各位の数字が何通りあるかを調べる問題になります。ほとんどの位で0~8までの9通りなのですが、最高位の数字だけは0が来れないので1~8の8通りになります。

 

(2) 問題文の和を、nの桁数で分類してみると見通しが良くなります。

nがl桁だとすると、nの最小値は100000・・0(0がl-1個), 最大値が88888・・8 (8がl個)

で、(1)で調べたal個だけあるわけです。

今回の問題では、和を上から評価したいので、nの最小値の情報があれば良さそうです。よって、nがl桁のものに限定したbnの和は、ザックリal/10^(l-1)未満と評価できるわけです(今回は、これくらいガバガバな評価でOKです)。

あとは、l=1,・・,kでΣを取ってしまえば等比数列の和になるので、問題文の不等式が示せることになります。

 

余談ですが、1+1/2+1/3+・・・は調和級数と言って発散するのでした。が、9が出てこないもの限定で足し上げると、どんなに足しても80未満になるということで、収束することが分かります。中々不思議な感じがしますね。

 

調和級数については、以下の記事で解説していますので、よければご覧ください。

stchopin.hatenablog.com

<筆者の回答>

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第2問

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楕円に内接する平行四辺形について考察する問題です。

 

(1)Eとlの式を連立して2つの実数解を持つ条件を調べる典型問題です。

 

(2) PQベクトル=SRベクトル、を言うには2つの条件が必要です。

・2つのベクトルが同じ方向である

・2つのベクトルの長さが等しい

lとmが平行なので、前者の向きに関する条件はクリアしています。なので、後者の長さの条件がクリアできればめでたしとなります。

lとmの傾きが同じなことから、PQの長さを直接求めるのではなく、「PとQのx座標の差」を調べれば十分だと分かります。

 

PQベクトル=SRベクトルという条件をもって、四角形PQRSが平行四辺形だと言えます。

 

結果自体は、図形的に予想できると思いますが笑

 

(3) (2)の結果から、PQRSが平行四辺形になる時は、PとR, QとSがそれぞれ原点Oに対して点対称じゃないといけないと分かります。正方形は平行四辺形の特別な場合なので、この場合も然りです。

このことから、OP, OQ, OR, OSが長さが等しく90°ずつ回転したものになっていれば正方形になることが分かりますので、(rcosθ, rsinθ), (-rsinθ, rcosθ)などと頂点の座標を表現できます。

これらがE上に乗るようにrとθを決めていきましょう。

 

<筆者の回答>

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第3問

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カタラン数が素数になる条件を求める問題です。(3)は試験場で解くのが困難な本セット最難問で、本番では捨て問で良いでしょう。(2)までができていれば十分です。

 

(1) 2nCnを階乗の形で書いて、無理やりn+1を取り出してあげれば証明できます。また、nとn+1が互いに素という有名な性質から、2nCnがn+1の倍数だと言えます。

 

(2)ここで登場するanを、カタラン数と呼びます。

カタラン数は階乗の形で計算されるものなので、an - (n+2) を計算、などと言った足し算引き算とは相性が悪いです。ここは、相性のいい比をとり、an / (n+2) >1を証明する、という方針で行きましょう。

 

anの分子には(2n)!という数が登場するので、まずはここからうまくn!を抽出し、分母と約分することを考えます。(2n)! = 2n ×(2n-1)×(2n-2)×・・・・と書き下して偶数のものから2をかき集めてくると、(2n)! = 2^n ×n! ×(2n-1)×(2n-3)×・・・と変形出来てn!を抽出できます。

分母に残った(n+2)!からは(n+2)(n+1)だけ除けて残りのn!を分解して、分子に残った2n-1, 2n-3達に均等に配分すると、(2-1/k)の形の掛け算を作ることができます。これらは全て1より大きいので、掛け算しても1より大きいと言えます。

先ほど除けた(n+2)(n+1)と分子の2^nを比べたときに、2^n > (n+2)(n+1)であれば、an/(n+2)がトータルで1より大きいと証明できますので、その方針で続けますと、n≧6の場合はこの関係が成立することを帰納法で証明できます。

ここまでで、n≧6の場合にan>n+2となることが示せました。

 

問題文の要求はn≧4の場合で示せなので、余ったn=4,5は個別にanを計算して確かめればよいでしょう。

 

(3)カタラン数が素数になる条件を調べます。

まず、小さいnでチェックすると、n=2,3の場合にanが素数になることが分かります。(2)の終盤で計算したn=4,5の場合は素数ではありませんでした。ここから、どうも素数になるのはn=2,3の場合だけなんじゃね?と予想できます。

ということで、n≧4の場合にanが素数にならないことを証明しに行きますが、この証明を思いつくのが、非常に困難でした。。。(2)を使うのか使わないのか、anの計算のされ方からアイデアを・・、anとan+1の比をとって何か見えてこないか、など散々に試行錯誤し考えました。悩んだ末の解法を紹介します。

 

まずanの分子に注目すると、(2n)!となっているので、「2n+1以上の素数が登場していない」ことに気が付きます。分子の時点で登場していない素数は、約分したところで登場しようがありません。なので、「anが素数だと仮定すると、an<2n+1でないといけない」という事実が分かります。

 

一方、an+1とanの比をとってみると、約分されまくって2(2n+1)/(n+2)というスッキリしたものになります。これを帯分数化すると4-6/(n+2)となり、n≧4では3以上になります。このことから、an+1 ≧ 3an が分かります。

 

ここで、(2)の結果を使うと、an ≧ 3an-1 > 3(n+1) > 2n+1となり、「an>2n+1」が言えました。これは、「anが素数だと仮定すると、an<2n+1でないといけない」という事実と矛盾しますね。

 

よって背理法により「anが素数だ」という仮定が誤りだったことになり、n≧4の場合にanが素数でないことが示せたことになります。

 

結果論ですが、(2)の結果も使うし、anとan+1の比をとった試行錯誤も役に立ったわけでした。。。これを試験場で思いつくのは厳しいので完全に捨て問で良いですね。

 

[別解]

答案の⑧式に注目すると、an+1が整数なので右辺も必ず整数です。ということは、右辺2(2n+1)anはn+2で割り切れないといけないわけです。

 

n≧4で考えると、2はn+2で割り切れませんし、2n+1についても、

(2n+1)/(n+2) =2 -3/(n+2)となり後半の分数が整数になる必要がありますがn≧4では実現不能です。

よって、残りのanがn+2で割り切れるしかないことになりますが、これはanがn+2の倍数ということを意味し、(2)の結果からanはn+2の2倍以上の値になります。これではanは素数になりようがないですね。

 

<筆者の回答>

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第4問

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球面上の4点に関する関数を最大化する問題です。

 

(1) まず、a,b,c,dの各ベクトルの大きさが1になることには留意しておくべきでしょう。

そして、問題文の式の形そのものが大ヒントなので、そこを目がけてFを式変形していきます。特に注目すべきは、計算途中に|d|^2が登場するのに、問題文のdは内積の一部として一か所しか登場していないこと、問題文の式にベクトルから孤立した定数項の数字がないこと、ですね。このことから、|d|^2を、|a|^2, |b|^2, |c|^2で置き換える、と言った発想が出てくることになります。

 

(2) Fは、a+b+cの「2次関数」と酷似した形をしていますので、平方完成が使えるのでは?と思いつきます。平方完成によってFの最大値Mが分かるだけでなく、Fが最大になるa,b,c,dの条件まで手に入ります。

 

(3) (2)の結果から、Fが最大となる条件はa+b+c = 3/2d となることだと分かります。cとdに与えられた成分表示を代入すれば、a+bが成分で求まります。

そのうえで、aとbの大きさが1だという条件から、a=(p,q,r)としてp,q,rの条件を求めていきます。一見すると未知数3つに対して方程式が2つしかなく、自由度があってp,q,rが一意に決まらない気がしますが、c,dの座標設定がうまく、一通りにバチっと決まるように問題が設計されています。

 

<筆者の回答>

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第5問

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円が領域に含まれる条件、回転体の体積を求める問題です。

これは(1)(2)については方針をしくじると泥沼にはまってしまう問題です。(3)については方針に迷うことはないでしょう。

 

(1) この手の問題は、パラメータ表示で考えるのが定番です。具体的にはC上の点は、(acosθ, a(1+sinθ) )とパラメータθを使って表現できます。

このC上の点全てがy≧x^2 に収まっていればいいので、全てのθに対して

acosθ≧a^2 (1+sinθ)^2 が成立するようなaの条件を調べればよいことになります。

 

(2) (1)と方針は一緒なのですが、難易度は一気に跳ね上がります。同じように

y≧x^2-x^4にパラメータ表示を代入するのですが、sinθの3次式が出てくる、aがキレイに分離できない、など厄介な要素てんこ盛りです。

ここで怠け者の私は、他にもっと楽できる方法がないかをいろいろ検討することにしました。あーでもないこーでもない、ぐぬぬ、そうこうしているうちに1時間以上が経過してしまいまして、最終的に「最初の方法でごり押すしかない」と観念しました。

 

さて、どうごり押しするか。不等式を整理してみると、1≧a ×sinθの3次式 という形になっているので、このsinθの3次式の最大値をaの式で求めて、それでもなお、その最大値×aが1以下になるようにaを決めればよいのでは、という発想に至りました。

(※なお、3次式を処理するにあたって、式をより簡単にして少しでもミスをなくすために、定番のsinθ=Xという変換ではなく、1-sinθ=Xと変換するという小技を駆使しております。)

考える3次式は、aの値によって単調増加になるか極値を持つかに分かれるので場合分けして検討します。前者の場合は最大値の計算が容易いですが、後者の場合は極大値も検討しないといけない、かに思われましたが、3次方程式の解の検討から、極大値が最大値よりも小さいことが確かめられるので、極大値を計算せずに済みました。もし極値も必要だった場合、計算が地獄になるのが目に見えていたので、大分楽になりましたよ。

 

[3/3追記]

パラメータ表示を使わない方法も検討しましたが、無事解くことができました。yの3次関数が、y≧0で常に0以上になるaの条件を求めることになります。yの関数を微分して増減をチェックすればOKでした。結果論、こっちのほうが楽です。初見での時間の無駄使いは一体何だったのか。。。

 

(3) y=x^2 - x^4 を回転してできる立体から、半径aの球をくり抜いた体積を計算することになります。aが十分小さければ球が丸々入りますが、ある程度大きくなると球がはみ出してしまいますので、入っている部分だけ体積を計算する必要があります。よってaの値による場合分けが発生します。

 

体積の計算自体は、置換積分を駆使すればさほど難しくありません。

 

<筆者の回答>

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(2)の別解です(パラメータ表示を使わずに解く方法)

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