皆さん、こんにちは。
今回の記事では、以前ご紹介したバーゼル問題
を証明しようと思います。
↓バーゼル問題の紹介記事
様々な証明の仕方がありますが、2本目の今回は、高校数学の範囲での厳密な証明を行います。
前回はオイラーによる証明方法を紹介しました。
直感的には分かりやすい証明だったとはいえ、その時に使った道具が、「テイラー展開」「無限積表示」といった高校数学を逸脱したものであり、「そもそも多項式の和で分解していいの?」「そもそもsinxに因数定理を使っていいの?無限個の因数ってどういうこと?」っていうツッコミどころのある厳密さに欠けた証明になっていました。
そこで今回は、「完全に高校数学の範囲だけで収まる厳密な証明」を行います。
使う知識は、基本的には
・三角関数の基本的な公式
・はさみうちの定理
の2点だけです。
早速始めましょう。
<証明>
[Step1: 1/(sin〇)^2の和を計算する]
まず最初に、1/(sinx)^2という関数を用意し、三角関数の公式を使って変形します。
まず1行目ではsinxの2倍角の公式を適用しており、2行目では部分分数分解を行っています。2行目を通分すると1行目に戻ることは計算で簡単に分かります。
そして3行目は、cosをsinに変える公式、sin(90°-x) =cosxを使っています。
すると、1/(sin〇)^2の2つの和の形に分解できたので、これに①式の関係を繰り返し適用していくことを考えるわけです。
ここでx=π/4を代入すると、①式の左辺については簡単に2と計算できます。
そして、右辺については①の関係を繰り返し使うことができて、下のようになります。
sinの中身が2進数分の奇数×πの形の和になるという理屈で、その分分母の4の個数が積み上がっていく格好です。
左辺と右辺をイコールで繋げば②式となります。
これでStep1が完了です。
[Step2: Step1の和を不等式で評価、はさみうちの定理を使う]
次に、②式を不等式評価します。
つかう評価式は、
です。
この不等式は、扇形を描くと明らかです。
2つの三角形の面積と、扇形の面積とを比較すればよいわけです。
(赤線が見づらくてすみません。。)
この不等式を変形すると、下のように1/x^2を真ん中に持って行った不等式が作れます。
この③式に、②式の角度を代入してΣをとれば、
となり、奇数の逆数の2乗の和を不等式で挟めたことになります。
この④式でnを無限大に飛ばすと、はさみうちの定理から
が言えます。バーゼル問題に大分近い形が得られました。
[Step3: 奇数の逆数の2乗和を、整数の逆数の2乗和に変形]
最後に、「整数の逆数の2乗和」に直します。
これは、「整数の逆数の2乗和」から「奇数の逆数の2乗和」を抽出することで実現出来て、
となります。この手法の肝は「偶数の逆数の2乗和」=「整数の逆数の2乗和」÷4という性質です。
あとは、「整数の逆数の2乗和」について解いてあげれば、
となって、バーゼル問題の証明が完了です。
最初の①式を使うという発想がユニークで難しいですね。高校数学のみで証明しようと思うと、必然的に風変わりなアイデアが必要になると言う事です。