皆さん、こんちには。
本日7/4にtwitterを覗いていると、なぜか「フィボナッチ数列」というワードがトレンド入りしていました。
何で急にと思ってツイートを見てみると、「ミュークルドリーミーみっくす」というテレ東の女児向け朝アニメで、「赤ちゃんにフィボナッチ数列を囁いて寝かしつける」という謎過ぎるシーンが登場したんだとか・・・
キッズアニメにフィボナッチ数列出すなwwwww #ミュークルみっくす #mewklemix #mewkledreamy #tvtokyo pic.twitter.com/0uHyMLu09p
— 福路太一 (@hukujitaichi) 2021年7月4日
ということで、それに便乗する形で、フィボナッチ数列について取り上げてみたいと思います笑。
0. フィボナッチ数列とは?
フィボナッチ数列というのは、以下のような数列です。
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,・・・・
どんな規則で並んでいるかというと、「前の二つの数字を足して、新しい数字を作る」というものです。
具体的に見てみると、
1+1=2, 1+2=3, 2+3=5, 3+5=8, 5+8=13, 8+13=21, 13+21=34, 21+34=55, 34+55=89,・・といった具合になっています。
漸化式を使って書くと、
というシンプルなものになります。
(※②式の初項と第2項については本質的には何でもいいのですが、両方1とするのが通例です)
さて、ここから、小さい方からn番目のフィボナッチ数列の数字は何か、すなわちフィボナッチ数列の一般項を計算していきましょう。
1. フィボナッチ数列の一般項(初項と第2項を特定しない場合)
①の漸化式は、いわゆる「3項間漸化式」というやつです。このタイプの漸化式の解き方は、「特性方程式を解く」のが一般的で、大学入試でも頻出のテーマです。
特性方程式は、an+2をx^2で、an+1をxで、anを1で置き換えてできるxの方程式で、
という2次方程式となります。解の公式を使ってこれを解いてあげると、
となります。
わざわざこんな2次方程式を解くのにはご利益があって、この2つの解を
と文字でおいてあげると、最初の漸化式①は、
と2通りに式変形することができるのです。⑤⑥式を展開して整理してみてください。ちゃんと①に戻ります。
そして、これらの式をよく眺めてみると、あることに気が付きます。
例えば⑤式に注目してみると、
と起き直すと、⑤式は公比Φ^ の等比数列に見えてきませんか?
これに気付けると、⑤式からbnの一般項が求まります。
同じようにして、⑥式についても
と一般項を求めることができます。
an+1の項が邪魔なので⑧-⑦を計算すると、
のように、anの一般項が求まりました!あとは、b1, c1を②から計算してあげればよいことになります。
ここで、一旦寄り道をしてフィボナッチ数列の有名な性質の1つを導くことにしましょう。
今、フィボナッチ数列の前後の数字の比率、an+1/anを考えてみます。これを計算すると、下のようになります。
分母分子を約分してあげると、⑩式のように等比数列の部分を一か所にまとめることができます。
ここで、この公比の値は、
のように絶対値が1未満になります。(※√5=2.236・・・でしたよね)
ということは、nを無限大に飛ばすと、この公比のn乗は0に収束します。
よって、前後比率は、
となって、Φに収束します。(※c1=0の場合は今回は考えないことにします)
しかもc1=0の場合を除き、フィボナッチ数列の最初の2つの数字の決め方によらずこの性質が成り立ちます。
このΦという値、前述のように
というものでした。これは「黄金比」と呼ばれる有名な値で、数学のそこかしこに登場する「美しい比率」として知られています。
例を挙げると、正五角形の対角線の線分の比率がこれになっていて、今年の共通テストの第5問でも題材になりました。
フィボナッチ数列という、とても美しいシンプルな数列から黄金比が登場するのが面白い所ですね。
3. フィボナッチ数列の一般項(初項=第2項=1の場合)
本題に戻ります。フィボナッチ数列の一般項は
でした。ここまででは、まだ一度も初項の情報、
を使っていなかったので、これを使ってb1, c1を求めてみます。
bn, cnの定義式が
だったので、②を代入すると下のようになります。
これを代入してあげれば、一般項が完全に求まります。
いかがですか?漸化式だとあんなにシンプルだったのに、一般項にすると√の混じったかなり複雑な式になってしまいました。一見すると、これが全て整数になること自体怪しく思えてきます。
しかし、中カッコの中身はどんなnに対しても「整数×√5」という形になり、それを√5で全体割るので必ず整数となります。
以上のフィボナッチ数列の一般項を求めるというテーマは、それ単体でも大学入試でよく出題されるので、練習を繰り返すとよいでしょう。
4. フィボナッチ数列の隣り合う2つの項は必ず互いに素
最後に、おまけ程度ですがもう1つ有名な性質を証明しておきましょう。
改めてフィボナッチ数列を書き下してみると
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,・・・・
となっていて、どの隣り合う2つの数字も互いに素(約分できない)なことに気が付きます。
これを背理法を使って証明します。
今、とある場所でan+2, an+1が公約数p (p≧2)を持つと仮定しましょう。
そうすると漸化式①から、anもpで割り切れることになります。
このような議論を何度も繰り返すと、結局、
a1, a2, ・・・・・, an, an+1, an+2 の全部がpで割り切れることになってしまいます。
しかし、②式からa1=1なので、実際にはa1はpで割り切れません。これで矛盾が示せたことになります。
よって、「とある場所でan+2, an+1が公約数p (p≧2)を持つ」という仮定が誤っていたことになり、言い換えれば「隣り合う2項が公約数を持つ場所は存在しない」、つまり「隣り合う2項は必ず公約数を持たない=互いに素」ということが示せました。
以上、フィボナッチ数列の基本的な性質を紹介しました。