ちょぴん先生の数学部屋

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平成の山梨大医学部後期数学 -2001年-

このシリーズでは、山梨大学医学部後期の数学の問題を解いていきます。

 

19回目の今回は2001年です。

(問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます。)

第1問

サッカーのリーグ戦を題材にした確率の問題で、この試験が行われた2001年の前年に開催されたシドニーオリンピックを題材としています(この組み合わせ、得点も史実通りのようです2000年シドニーオリンピックのサッカー競技・男子 - Wikipedia )。今年のW杯でも、同じような予選突破条件を考察する機会は多いですね。

 

関門が勝ち点、得失点差、総得点、直接対決、と多いためとにかくありうる場合が多く検討が死ぬほど大変です。本番では、計算ミスが起こりやすい事も込みにして最後まで解き切る必要はないですね。特に(4)が難問です。

 

(1)スコアボードが1-0, 2-0, 2-1となる確率を計算して足し上げればOKです。

 

(2)(3)日本以外の3チームは、最終試合の結果がどうであれ勝ち点は6以下となるので、日本は引き分け以上であれば1位通過が確定します。あとは、日本が負けた場合にどうなるかを考察していきます。

 

(4) これは難問です。

南アフリカとブラジルがそれぞれ1位通過する確率、2位通過する確率を考えていくことになりますが、前者についてはさほど難しくありません。

 

問題は後者の方で、(3)までで深入りしなかった「日本が引き分け以上」の場合での順位を検討しなければならず、場合によっては勝ち点も得失点差も総得点も同じ3チームが三すくみになるという状況が発生します。

 

(5)むしろこちらの方が解きやすいでしょう。スロバキアが予選突破するには「南アに勝利し、日本がブラジルに勝つ」が絶対条件であり、そこから得失点差、総得点がどうなるかを検討していきます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

三角形の内接円半径に関する問題です。

 

まずOPQが三角形になる必要があるので、P,Qは別々の直線上にある必要があります。どちらをx軸において、どちらをy=√3x上におくかは、対称性もあるので気にする必要はありません。

 

(1) 余弦定理を使えばよいでしょう。直線の傾きが60°なので三角比の算出も容易いです。

 

(2)内接円半径rは、△OPQの面積と周長からp,qの式で表現できます。

ここからは、いわゆる「制約条件付きの目的関数の最大最小」となります。

 

今回の場合は、(1)で求めた制約条件もrの式もp,qの対称式となっているので、s=p+q, t=pqと変換すると考えやすくなります。このとき、s^2 -4t≧0となることに注意してs,tの取りうる値の範囲のチェックが必要です。

 

別解としては、(1)の結果からp,qをパラメータ表示する方法、そして大学数学の秘密兵器「ラグランジュの未定乗数法」を使う方法が挙げられます。

ラグランジュの未定乗数法 ~制約条件付きの最大最小を求める秘密兵器~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の解答>

別解その1:  (1)の結果をパラメータ表示

別解その2:ラグランジュの未定乗数法を使う(大学範囲)

 

第3問

2項係数の計算に関する問題です。

 

(1)いわゆる公式証明ですね。出る順番を固定したときに、確率はp^r×(1-p)^(n-r)となるので、あとは出る順番が何通りあるかを考えればよいでしょう。

 

(2)(3)2項定理を使ってシグマを計算していけばよいでしょう。(3)についてはrをうまく2項係数に吸収してあげることを考えます。

 

<筆者の解答>

 

第4問

誘導付きで積分の計算をする問題です。

 

(1)積和の公式で、積分の中身を和に変換するとよいです。ただ、m=nの場合だけ例外扱いになることに要注意です。

結果はm=nのときだけ有限の値、m≠nのときは0になるというものになり、こういう性質を持った関数の組を「直交関数」と呼びます(ベクトルの内積積分版のようなものです)。

 

(2)左辺を計算していき、分母と分子を別々に不等式評価してあげます。

 

(3)問題文の流れは結局のところ数学的帰納法ですね。

 

(4) (3)の結果を使って積分の形にしていき、(1),(2)の結果を使ってはさみうちに持ち込みます。

 

今回の積分、高校数学ではここまでの大掛かりな誘導がないと解けませんが、大学で習う「留数定理」を使うと誘導なしに一発で計算することができます。

虚数の力で積分が解ける! ~コーシーの積分定理・留数定理~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の解答>

留数定理を使って(4)を解く別解です。